見れば廊下の向こうからリューがひとりこちらにやって来る。
 と、アマリーはそんな彼の前へ出て先ほどのように深く頭を下げた。

「陛下、先ほどは大変失礼いたしました!」
「あ、あぁ」

 リューはそんな彼女を前に最初驚いた様子だったけれど、その後ちらりと私を見た。

(え……?)

 そして彼はひとつ咳ばらいをすると、アマリーに声をかけた。

「これからも、コハルのことをよろしく頼むぞ」

 それはもう、めちゃくちゃ良い笑顔で。

「――っ!?」

 そのキラキライケメンスマイルをまともに喰らったアマリーはひゅっと息を吸ってそのまま固まり、余波を受けたローサも目を丸くし顔を赤らめた。
 メリーだけが私の腕の中で「うげぇ」と小さく呻いていた。

 リューは「これでどうだ」と言わんばかりの得意げな視線を私によこし、言った。

「コハル、また後でな。無理はするなよ」
「は、はい……」

 リューが去ってしまって、まだその場に呆然と直立したままのアマリーにローサが心配そうに声をかける。

「アマリー、アマリー?」

(確かに、優しい竜帝陛下になって欲しいとは言ったけど……)

 ローサに肩を揺すられても固まったまんまのアマリーを見て、これはこれでちょっとマズイかもしれないと、思ったりした……。