少しの間があって。
「はぁ~~」
「コハルさまぁ~」
ティーアが顔を覆い大きな溜息を吐いた。
腕の中のメリーもがっくりと脱力するのがわかった。
「いや、だって……」
(まさか、そんな本気だなんて思わなかったし!)
不敵な笑みを浮かべている彼を見上げながらそう心の中で叫んでいると、ティーアは溜息交じりに言った。
「彼は貴女とそういう約束をしたから早急に召喚しろと、それで今回貴女を召喚したのよ。彼、つい先日正式に『竜帝』の名を継いだのですって」
それで先ほどティーアはあんなに言いにくそうだったのかと納得する。
リュー皇子、いや、リュークレウス竜帝陛下がふんと鼻を鳴らした。
「話はまとまったようだな。こちらはもうとっくにお前を迎える準備は出来ているのだ。さぁ、行くぞ。コハル」
そう言って、もう一度手を差し伸べこちらに足を進めた彼から私はまた一歩後退る。
「あの……ちょっとお聞きしたいのですが」
「なんだ?」
「もし私があなたのお妃になったら、元の世界には」
「たまの里帰りは許可するぞ? 俺は心が広いからな!」
得意げに笑う彼。
でも私はそれを聞いて思い切って頭を下げた。
「ごめんなさい! とりあえず一旦帰してください、お願いします!」