「話は全て、あの妖精から聞いた」

 枕元の椅子に腰掛けたリューが神妙な面持ちで続けた。

「メリーから……?」

 そこで私は全てを思い出し、ガバっと起き上がった。
 ――そうだ。怒りの感情に任せて『聖女の力』を使ってしまったのだ。
 私は焦って彼の身体を見回す。

「リューはなんでもない!? 誰かほかに被害とか出てないですか!?」

 覚えているのは凄まじい雷鳴。
 脳裏に浮かんだのはあのとき見た黒焦げになった魔物たちだ。
 もしあれが誰かに当たっていたらと考えたらぞっとした。
 
「あ、ああ、大丈夫だ。城の屋根が一部焼け焦げていたそうだが、別に問題はない」

 それを聞いてほぅと息を吐く。

(良かった……や、全然良くない)

 聖女の力は、私の感情の高ぶりが引き金となる。
 勿論この世界でだけ。
 そのことを7年の間にすっかり忘れていた。

「私、どのくらい寝て……?」
「一時間ほどだ。先ほど、あの妖精が癒しの魔法をかけていた」

 だから今身体は楽なのだとわかった。
 私は頭を下げて心から謝罪する。

「本当にすみませんでした」
「いや、……それだけ、コハルが俺に対して怒りを覚えたということだ」

 その力ない声音に顔を上げて、リューが酷く気落ちしていることに気付いた。