その後、違うメイドさんが先ほどの花を部屋まで届けてくれた。
 メリーは私たちの様子を見て色々と察したのだろう、置かれた花瓶からおずおずと花を引き抜き私たちには見えないよう後ろを向いてもそもそと口に入れていた。
 それを見て、後でメリーと一緒にアマリーに会いに行こうと思った。


「聖女コハル様、この度はおめでとうございます!」
「なんとお美しい。さすがは陛下がお選びになったお方ですなぁ!」
「お初にお目にかかります。聖女コハル様。わたくし、この竜の国で――」

 遅れて出席した大臣たちとの談話の間も先ほどのことで頭がいっぱいで、何か話しかけられても曖昧な返答しか出来なかった。
 リューの隣の豪華な椅子に座り、ただずっと出来る限りの笑顔を浮かべていた。

 一時間程だったろうか、大臣たちが帰っていき謁見の間の扉が閉まってすぐに私は立ち上がった。
 ――今この場はふたりきり。セレストさんの姿もない。
 私が前に立つと、リューはきょとんとした顔でこちらを見上げた。

「どうしたコハル、疲れたか?」
「いえ。あの、先ほどの件ですが」
「先ほど?」

 彼が軽く首を傾げる。

「お花を運んでくれたメイドさんの件です」
「ああ、そうだ。コハルは平気だったのか? 身体が冷えては良くないからな」
「私のことはどうでもいいです!」

 つい語気が強めになってしまった。
 案の定リューは驚いたようで目を丸くした。