7年前の皇子は、まだ私より小さくて見た目小学生。
 とにかく偉そうで口が悪くて我儘で、最初出逢ったときの印象は悪ガキ。でも実は寂しがり屋という可愛いところもあって。――そんな、所謂ツンデレ皇子だったのだ。
 それが、7年でこんなにふてぶてしそうなイケメンに成長するなんて……!

 そういえば彼ら一族は竜の血を引いているとか……成長速度が私たち人間とは少し違うのかもしれない。

「俺が、なんだ?」
「いえ、その……」

 私が口ごもっていると、ティーアが私の横に来て小声で言った。

「コハル、本当にそんな約束をしたの?」
「え?」
「彼の、妃になるって……」

 そう訊かれ、私は必死に思い出す。

 ……あのとき、私はなんて答えただろう。
 
 そう、あのとき。
 私が彼の国を去るときだ。別れ際に彼は恥ずかしそうに顔を赤らめ、でも必死な様子で私に告げたのだ。

「俺が竜帝になったら、お前を妃に迎えてやってもいいんだからな!」
「あはは~。それまでリュー皇子が私のことを覚えていたら良いですよ~」

 ――あ。

「コハル?」
「……良いって言った」

 ぼそっと答えると、ティーアが耳を寄せた。

「え?」
「良いですよって、言っちゃった」