(私はリューの隣で笑っていればいいんだ)

 そう何度も自分に言い聞かせながらリューの後について廊下を歩いているときだった。
 前方から誰かがぱたぱたと走ってくるのが見えて私は大きく目を見開く。

(アマリー!)

 彼女はたくさんの綺麗な花が生けられた花瓶を手にしていて、その花のせいで私たちが見えていないようだった。
 嫌な予感がして、私は駆け足でリューを追い越し手を広げる。

「アマリー!」

 そう声をかけると彼女はびっくりしたのだろう。急に足を止めたせいで持っていた花瓶がぐらりと傾いた。

 まずい! そう思った時には遅く……。

「……」
「……」

 私の足元には水たまりが出来、色とりどりの花が散らばっていた。
 ドレスのひざ下あたりまでその水は飛び散り、ぽたぽたと水の垂れている花瓶を持ったアマリーの顔がどんどん蒼白になっていく。

「――た、大変失礼いたしました……!」

 そう震えた声で謝罪しアマリーは深く頭を下げた。