「――ちょ、ちょっと待ってください。申し訳ないんですけど、何かの間違いじゃ……?」

 私はそう言って、彼からじりじりと後退りをした。
 すると彼は更に不機嫌そうに、いや、少しふてくされたような顔をした。
 それを見て一瞬何かを思い出しかけて。

「約束したではないか。俺が竜帝になったら妃として迎えると」

 ――竜帝になったら、妃に迎える……?


『 俺が竜帝になったら、お前を妃に迎えてやってもいいんだからな! 』


 そのとき唐突に耳によみがえったのは、そんな少年の声。
 でもあれは。あの声の主は……。

「も、もしかして、リュー皇子!?」

 私がその名を口にした途端、彼は満足げに口の端を上げた。

 リュー皇子。私はそう呼んでいたけれど、確か正式な名はリュークレウス皇子……だったはず。
 彼はこの世界に君臨する5人の王の中の一人『竜帝』と呼ばれる王の息子だった。
 7年前、彼の父である竜帝は魔王に洗脳され操られていた。それを知った私たちは協力し合い共に戦い、そして見事彼の父と国を魔王の手から救い出したのだ。
 一気にそこまで思い出して。 

「いやいやいや、でもリュー皇子は……っ」

 口にしかけて危うく止める。