再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。


「メリーは前から知っていたのです」
「え?」

 抱っこしているメリーがニコニコとこちらを見上げていた。

「コハルさまのお腹で命がどんどん大きくなっているのがわかったのです」
「そう、だったの……?」

 だったらもっと早くに教えて欲しかったなぁとも思いつつ。
 さすが妖精といったところか。

(ん?)

 ということは、もしかして同じ妖精であるエルも……?

「そうそう、コハル」
「えっ!?」

 忽然と傍らに姿を現したエルにびっくりする。
 と、今度はエルが私に耳打ちをした。

「花の王国の聖殿の件だけど」
「! なんで、そのこと」

 あのとき、皆はいなかったはず。
 するとエルはハァと小さく溜息を吐いた。

「ま〜た忘れてる」
「え?」

 彼が私の胸元を指差して、思わず「あっ」と声が出てしまった。

「ブローチ!」

 エルの目になるという『妖精の瞳』。竜の洞に入る直前に受け取ったことをすっかり忘れていた。

「だから、あのときの魔王とコハルのやりとりは大体聞こえていたよ。まぁ、魔王の創り出した闇が邪魔で見ることは難しかったけどね」

 そして、エルは再び声を潜めた。

「魔王は5年前から彼を少しずつ蝕んでいたんだ。だからきっとあれは無意識下での行動だったんだと思う」

 エルがとても優しく微笑んでいて。

「だから、竜帝くんを許してあげて」
「エル……」

 そのとき、風に乗って低い唸り声が聞こえてきてハっとする。