「私、コハルに手紙を送ったでしょう?」
「うん」
「あの頃からコハルのことが心配でね、竜の国へ向かう準備を進めていたの。念のため、ブランカにも連絡をとってね」
「そういうことさ!」
やはり、ティーアもリューに疑念を持っていたということだろう。
そして竜の帝国へと向かっていたふたり。でもその途中。
「エルが!?」
「そ。いきなり目の前に現れて今コハルたちは砂漠の国にいるって言うからさ、急遽この国に進路変更したわけさ。間に合って良かったよ」
……それは一体いつの時点での話なのだろう。
やはりエルは不思議な存在だ。この世界で一番の不思議案件かもしれない。
「コハル」
「え?」
ティーアがなんだか少し悪戯っぽい顔をして私の耳元でこそっと呟いた。
「おめでとう、コハル」
「!?」
その言葉が何を意味するのかすぐにわかってしまって、私は自分の顔が真っ赤になっていくのがわかった。
そうか。先ほどの魔王とのやりとりを聞いて皆に知られてしまったのだ。
あのときはただ夢中でそんなこと気にしていられなかったけれど。
ふふっと口に手を当て微笑むティーア。ブランカまで意味深な笑みを私に向けていて。
「あ、ありがとう」
私は小さくお礼を言う。
恥ずかしいことではないけれど、以前から知っている皆にいつの間にか知られているというのは、やっぱり大分恥ずかしかった。



