「リューーー!!」
私が大きく叫ぶと、ぴくりと彼の硬そうな目蓋が反応するのがわかった。
だから、私は彼に向かって駆け出した。
「コハル!?」
「コハル様!!」
皆の焦った声が聞こえたけれど、私は止まらなかった。
不思議なほどに不安はなかった。
今の私なら、リューを取り戻せる絶対的な自信があった。
――リューは、私とは逆。
リューは愛を知っていたからこそ、愛を失う恐怖にずっと怯えていた。
そんな彼をこんなになるまで追い詰めてしまったのは私。
だから、彼を取り戻すのは私の役目だ。
何より、今はリューとたくさん話したかった。
まだリューに話していないことがたくさんある。
別々の世界で過ごした7年の間のこと。
私たちが出逢う前の話だって。
リューから聞きたいこともたくさんある。
話して欲しいことが、たくさん、たくさんある。
リューが大きな口を開けて、その中にメリーたちを襲った黒い炎を見た。
それでも私は足を止めなかった。



