『 竜帝はまだ余の手の中ぞ! 』
そして再びの地響きと共に私たちの背後から現れたのは、美しい黒竜だった。
「リュー!」
私は彼の名を叫ぶ。
間違いない。あの夜私を助けてくれた竜だ。
でもこちらを見下ろすその目は、あのとき見た優しい金の眼ではなかった。
『 聖女よ、先ほどオマエが最後の引き金を引いたのだ! 竜帝は完全に余の傀儡と成り果てたわ! こやつの父のようにな!! 』
魔王と同じ赤い眼をしたリューを見て、私は思い出した。
リューのお父さんもあのときこんな赤い眼をしていたことを。
『 親子揃って哀れよのお! “愛”とか言うつまらぬもののために簡単に心を惑わされおって! 』
そして魔王は嗤い叫んだ。
『 竜帝よ! こやつらを殺せー!! 』
魔王の声に応えるようにリューが雷鳴のような咆哮を上げる。
その場の空気がビリビリと震え皆に緊張が走る。
こちらを睨め付けるぎょろりとした赤い眼に、いつもの彼の優しさは微塵も感じられない。
――でも。



