「それと、この者たちにコハルの世話を任せる」
「え?」

 振り向くと、数人のメイドさん風の格好をした女性たちが私に頭を下げていた。

「よろしくお願いいたします。聖女コハル様」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

 世話なんて私には必要ないのにと思いつつも、一斉に挨拶をされて私も頭を下げる。

「そして、こちらが寝室だ」
「え?」

 顔を上げると、リューが隣の部屋の前に立っていて私はそちらに駆け寄る。
 そう、先ほどの部屋にはベッドが無かったのだ。
 寝室は別なんだと納得して、リューがその部屋の扉を開けた。

「俺たちのな」
「…………」

 その豪華な天蓋付きベッドはキングサイズよりも更に大きく見えて、私はリューの隣でだらだらと冷や汗を流していた。

(――そ、そうだ。結婚するってことは寝食を共にするってことで、リューと一緒に寝るってことで……ね、寝るって……リューとそういうことをするってこと……!?)

 この歳まで男の人と付き合ったことはなく、勿論そんな経験一度もない私は、先ほどの覚悟がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じていた。