再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。


「ごめんなさい、リュー。少し我慢してください。絶対に助けますから」
「コハル?」

 今の感情の昂ぶりは聖女の力を発揮するのに十分だ。
 魔王への怒り、そして己への怒りでざわざわと自分の髪が蠢いているのがわかる。
 でも、そのときだった。

 《 やめておけ、聖女よ 》

「!?」

 笑いを含んだ低い声が、どこからか響いてきた。

「魔王……っ!」

 間違いない。この人を小馬鹿にしたような笑い声は7年前に相対した『魔王』のものだ。
 姿は見えないけれど、恐ろしいくらいに整った美しい顔が脳裏に蘇った。
 その胸糞悪い声が続ける。

 《 聖女の力を使ったとて、こやつが死ぬだけ 》

「なっ!?」
「コハル? どうした」

 私を抱えているリューがきょとんとした顔で私を見ていた。

「……この声が、聞こえていないんですか?」
「声?」

 その眼は嘘をついているようには見えない。

 《 こやつに余の声は聞こえておらん 》

「っ、あなたが、あんたが操っているからでしょう!?」

 聖女の力でリューが死ぬなんてハッタリに決まっている。
 そうだ。魔王はこちらの弱点をうまく突いて心を惑わすことを得意としていた。
 耳を貸してはいけない。