リューは私の傍らに立つと、彼らに向かって大きな声で告げた。

「皆も知る通り、彼女がかつて我が国を救った聖女コハルだ。我はコハルを竜帝妃として迎える!」

 ビリビリと城全体に響くような声。

「おめでとうございます、竜帝陛下!」
「おめでとうございます、聖女コハル様!」

 そして再びの大合唱。

(ひええぇぇ~~っ)

 内心でそんな情けない悲鳴を上げながら、私は頭を下げ小さな声で言った。

「よ、よろしくお願いします」



 その後、順番にエントランスに並ぶ彼らの紹介をされたけれど、緊張もあってその役職や名前はほとんど覚えられなかった。
 ただ先ほどのオールバックで眼鏡の人が執事のセレストさんだということだけは覚えた。

 そして今はリューについて広い城内を案内されている。

「ここがコハルの部屋だ。好きに使っていいぞ」
「私の……?」

 その部屋は元の世界の自分のワンルームなんかより全然広く天井も高く豪華で、大きな窓からはバルコニーに出られるようだった。
 棚や化粧台など調度品も色々と揃っているけれど、ひとつだけあるべきものがなくて首を傾げる。