城に向かってリューはどんどん高度を下げていく。
 私は知らずごくりと喉を鳴らしていた。
 7年前、堅牢な城壁に囲まれたその城は魔王に支配され魔物で溢れていた。
 今はもうそんなことはないと分かっていてはいても、やはり未だに恐ろしいイメージがあった。
 
 リューが軽く音を立てて着地したのは、その城の庭園だった。
 優しく下ろされて、私は数時間ぶりの地面をしっかりと踏みしめた。
 まだ目を覚まさないメリーを抱っこしたままその庭園を見回す。
 ティーアの城の庭園は『花の城』の名に相応しく花と緑に溢れ素晴らしいものだったけれど、こちらはそれに比べるととてもシンプルだった。
 中央に大きな噴水はあったけれど植栽は少なく、辺りがもう暗いこともあってなんだか少し冷たい印象を受けた。

「行くぞ。皆にコハルのことを紹介する」
「え!?」

 思わずそんな大きな声を出してしまった私に、リューは優しい微笑みを向けた。

「コハルはただ俺についていればいい」

 そうして彼は大きな扉へと向かう。