彼は今、何と言っただろう。

 ――聖女サマを手に入れるには、こうする他なかった……?

 その言葉の意味を頭が理解する前にカネラ王子は再び口を開いた。

「だって、まさか聖女サマが竜帝妃になるなんて思わなかったし。でも正式にはまだなんだよね。ならさ、『砂漠の王妃』でも良くない?」

 彼は一体、何を言っているのだろう。

(砂漠の王妃……?)

 そのとき彼の手が私の髪を掬うように触れてびくっと肩が震えてしまった。

「王がね、言うんだよ。聖女サマが竜帝妃になるなんて冗談じゃない。どんな脅威になるかわかったものじゃないって」

 髪をいじられながら、私はセレストさんの話を思い出していた。
 私が竜帝妃になると知り、どの国も騒ぎになっているだろうという話。

「それでね、聖女サマを竜帝から奪ってみせたらお前を……俺を、次の『砂漠の王』に考えてやってもいいって言うんだ」
「……っ!?」

(じゃあ、カネラ王子は自分が王になりたくてこんなことを……?)