「聖女サマ?」

 呼ばれてゆっくりと目を開けると、不思議な色の瞳が私を見下ろしていた。
 軽くウェーブの掛かった金髪がキラキラと輝いて見える。

「カネラ王子……?」

 声をかけると、その表情が少しだけ緩んだ気がした。

 ――ああ、これは7年前の記憶だ。
 襲ってきた魔物たちを倒すために私は聖女の力を使い、例によって気を失ってしまったのだ。

「魔物たちは?」
「おかげで全滅。……けど、聖女サマは平気なの?」

 私はその言葉に小さく驚く。
 そして緊張がゆるんだせいもあったかもしれない。私はふっと笑ってしまった。

「……なに?」
「あ、いえ、すみません」

 ……心配してくれたことが意外過ぎて、なんて言えるわけがない。
 私は砂の大地に手を着いてゆっくりと起き上がる。

「私は大丈夫です。王子は怪我とかありませんか?」

 すると彼の眠そうな目が少しだけ見開かれた。

「……なんで」

 それは小さな小さな声だった。

「え?」