「ほら、王都が見えてきたよ」

 前を行くカネラ王子の声が聞こえてきたのは、オレンジ色に染まる砂の地平線に赤い夕陽が今にもくっつきそうな頃だった。
 ゆっくりと顔を上げると、永遠に続くかと思われた砂丘の向こうに確かに緑と街が見えた。
 幸い砂嵐に遭うことなく、予定通り王宮に辿り着けそうでほっとする。
 港町でカネラ王子が用意してくれた水も残り少なくなっていた。

「やっとか……」
「干からびてしまうかと思ったのです~」

 私と同じラクダ(っぽい動物)に乗るリューとメリーもぐったりとした様子で呟いた。
 ちなみに手綱を握っているのは一番前に乗るリューだ。

(ほんと……日本の夏の方が暑いとか言ったの誰?)

 私である。
 日本の夏も確かに暑いけれど、建物の中に入ってしまえばエアコンという文明の利器があった。
 ここにはそれがない。
 そのことを、このどうしようもない暑さを、7年の間にすっかり忘れていた。
 途中、リューがぼそりと「俺たちだけ先に飛んで行くか」と呟いたときには思わず賛同しそうになってしまった。