今度目を瞬いたのは私の方だった。

「自分には全く関係のない国……や、世界のために、なんかやたらめったら必死になってる聖女サマを見てたらさ」

(やたらめったら必死にって……)

 そんな言い方をされると、なんだか無性に恥ずかしい。
 でもそんなことには気付かない様子でカネラ王子は続けた。

「それに比べて俺は何してんだろって思ったんだよねぇ」
「王子……」
「だから、俺は」
「やはり暑くなってきたな!」
「!?」

 大きな声と共に急に割り込むように私たちの間に入ってきたのは小さなリューだった。
 ぎゅっと手を握られて強く引っ張られる。

「部屋に戻るぞ、コハル」
「え? でも、今話を」

 カネラ王子の方を見ると、彼は首を横に振った。

「あぁ、いいよ。港が近くなったらまた声をかけるから」
「すみません、お願いします」

 リューにぐいぐいと手を引っ張られながら頭を下げ、私は甲板を後にした。