「竜帝の弟くん。いつも聖女サマにくっついてるから、今日はいないんだと思って」
「あ、あぁ。まだ寝ていて、起こすのも申し訳ないので」

 内心ギクリとしながら答える。

「そう。……なんというか、兄弟ほんとそっくりだよね」
「あ、ははは。ですよね~」

 乾いた笑みを浮かべながら、とりあえず話を変えることにした。

「心配ですよね」
「え?」
「王子が不在の間、何もなかったらいいのですが」
「ああ、……うん」

 彼は頷いて、また海の方を見つめた。

「まぁ、王や兄様たちがいるから問題ないとは思うけど。早く聖女サマを連れて帰って皆を安心させてやりたいよ」

 そんな王子の言葉に小さく驚く。

「……やっぱり、変わりましたね。カネラ王子」
「え?」

 王子はこちらを見てパチパチと目を瞬いた。

「以前は、なんというか、あまり国のことに関心があるように見えなかったので」
「あぁ……」
「すみません、失礼なことを言いました」

 頭を下げて謝罪すると、カネラ王子はふっと苦笑した。

「いやぁ、その通りだったからね。さすがは聖女サマ。なんでもお見通しだ」

 さすがと言われるほどのことではないのだけれど。

「まぁでも、俺が変わったように見えたんなら、それは多分、聖女サマのお蔭かな」
「え?」