間違えるはずがない。
 少し癖のある黒髪に竜を思わせる金の瞳。生意気そうな自信に満ちた表情。
 目の前の少年はどう見ても7年前の思い出の中のリュー皇子そのままだ。
 でも、その現実を頭が受け入れようとしない。

「コハル?」

 絶句している私を見上げて彼が小首を傾げる。

「この方に何か御用ですか?」

 そのときローサが彼の前に立ち、厳しい口調で訊ねた。
 どうやら護衛である彼女は少年と言えど突然現れた彼を警戒しているようで、私は慌てる。

「ろ、ローサ、この人は」
「俺は竜帝の弟だ」

 私の言葉を遮り、ふんと偉そうに答えたのは彼だった。

「え?」

 私とローサの声が重なる。

(リューの、“弟”?)

「陛下の、弟君ですか?」

 ローサが驚いた様子で目を瞬いた。きっと今私も同じような顔をしているのだろう。
 ちなみにメリーは私の腕の中で既にスヤスヤとお休み中である。