竜の城をぐるりと囲む城壁。その玄関口となる竜のレリーフが施されたアーチ型の門を潜ると、その先にカネラ王子と馬車が待っているのが見えた。

「馬車で行くの?」
「はい。港まで馬車で参ります。夕刻には港に到着できるかと」

 ローサが答えてくれる。
 ここに来るときはリューに抱えられて飛んできたし、7年前は基本徒歩だった。
 どこかで乗合馬車を使ったことはあったけれど、こんなに装飾の凝った立派な馬車に乗るのは初めてだ。

「お待たせしました」

 カネラ王子と馬車の前に立つ御者さんにぺこりと頭を下げる。
 と、王子はローサの方を見た。

「えーと、あんたが例の護衛さんね」
「ローサと申します。以後お見知りおきを。カネラ殿下」

 王子はローサの前では素の態度で行くみたいだ。
 ローサもそれで特に驚いたり気分を害したりした様子はない。

「で、それは?」

 彼は私の後ろに隠れているメリーを指差した。