「あいつ、意外とあっさりでしたね。てっきり一緒について来るかと思ったのです」

 ローサについて城門までのゆるやかな坂道を下りながらメリーがちらりと後ろを振り返った。

「リューはそう簡単に国を離れられないよ」

 そう答えながら、私も内心少しだけ拍子抜けしていた。
 確かに昨夜、笑って見送ってくださいとお願いしたけれど。

(なかなか手を離してくれないんじゃないかとか考えちゃった)

 まるでそうなることを期待していたみたいで、そんな自分が恥ずかしくなる。
 きっと竜騎士であるローサを護衛にと決めてリューも納得したのだろう。

 私の前を行く、いつものエプロンドレス姿とは違うピンと背筋の伸びた凛々しい後ろ姿を見つめて。

「ローサ」
「はい」

 呼びかけると彼女はすぐにこちらを振り返ってくれた。

「護衛を引き受けてくれて、本当にありがとう」

 そうして頭を下げる。
 さっきは驚き過ぎてちゃんと言えなかったから。

「とんでもございません。陛下より竜騎士の称号を戴いたときから、私の役目はコハル様をお守りすること。この度の護衛という任務も大変光栄なことと思っております」

 胸に手を当て敬礼され、そんなこれまでとは少し違うローサの態度になんだかくすぐったくなった。