「わざと付けているんだ」
「え?」

 首筋をガードしていた手を取られて、その手のひらのすぐ下、皮膚の薄い部分に強く口づけられる。
 ぴりっとした小さな痛みと共に赤い痕がくっきりと付く。

「これは、コハルが俺のものだという証だ」
「……っ」

 竜の瞳に見下ろされてぞくりとする。

「……リュー、まだ怒ってます?」

 なんとなく、そこはかとない怒気を感じて訊くと、彼はスっと目を細めた。

「コハルに怒っているわけじゃない。このタイミングで動き出した魔族と砂漠の国の連中に腹が立っているだけだ」
「それ、は……っ」

 やっぱり怒ってるんじゃないかと続けようとして、今度は鎖骨の下あたりを強く吸われてびくりと身体が震えてしまう。

 ……彼の怒りはわかる。
 私だって、こんな事態にならなければこの城でやりたいことが色々とあったのだ。
 文字も早く覚えたいし、竜帝妃になるための勉強もしたい。
 それに……。