「何もないですよ!」
「何かと世話になったんだろう?」
「世話って、港まで迎えに来てくれたり砂漠の国を案内してくれたりって意味で、でも彼、王様に言われて仕方なくって感じでしたし、リューが考えているようなことは何もないです!」
「あちらはまた会えて嬉しいと言っていたが?」
「あんなの社交辞令に決まってるじゃないですか! ……本当に、何を考えているのかいまいちよく分からない方だったので会話もそんなにした覚えないですし……信じてくれないんですか?」

 流石にむっとして睨み上げるとリューは脱力するように私を抱きしめた。

「……すまない。信じてはいるんだが、俺のようにコハルをずっと想っている奴が他にもいるんじゃないかと、どうしても考えてしまってな」

 それを聞いて、私はその背中に手を回す。

「そんなの、リューだけですよ」

 7年の間ずっと、こんな私を想い続けてくれていた人なんて他にいるわけない。