「そう、じゃあ王の元まで案内するからついてきて」

 眠そうな目をしてそう言った彼はくるりと背を向け歩き出した。
 と思ったらぴたりと足を止め、こちらを軽く振り向きもう一度口を開いた。

「忘れてた。僕は砂漠の国の王子カネラ。少しの間だと思うけどよろしく、伝説の聖女サマ」

 そうして今度こそ彼は歩き始めた。
 まさか王子様だなんて思わず、私は流石に驚いてぽかんとその背中を見つめたのだった。

 それが、カネラ王子との出会いだ。

 その後も彼はとにかくマイペースで常に気怠げで、接しているうちに関心がないのは私に対してだけじゃなく、何に対しても興味関心がないのだとわかった。
 例えばこの国の行く末や、世界がこのまま魔王に支配されようがどうでもいいというようにさえ見えた。

 それでもその数日後、私が砂漠の国を去るときには少しは私のことを認めてくれたのか、別れ際に彼はこう言ったのだ。

「聖女サマってのもなかなか大変だね。まぁ、死なないように頑張って」

 もう苦笑するしかなかった。