「うぅ……っ」
「皇子?」

 先ほどから苦しそうな顔でうなされている彼に小さく声をかける。
 と、彼の口が微かに開いた。

「……母、上……」

 お母さんの夢を見ているのだろうか。
 たったひとりこんな遠くまで来て、本当は心細いのだろう。

「……父上……っ」

 その顔が泣きそうに歪んだのを見て、思わず身体が動いていた。
 彼の額にそっと手を触れそのまま優しく頭を撫でる。
 目を覚ましたら「無礼者」とかなんとか言って絶対に怒られると思いながらも何度か続けていると、その表情が徐々に穏やかなものになっていった。
 それから少しして静かな寝息が聞こえてきて、私はほっとした。

 ――そうか、すっかり忘れていたけれど。
 確かにあのときと逆だと気付いて、私は夢の中で微笑んだ。