「コハルは何も悪くない」
「……っ」

 ふわりと温もりに包まれて驚く。
 リューは私の頭を優しく撫でながら穏やかな声で続けた。

「誰だって、二度と故郷に帰れないとなったら不安にもなるだろう。コハルの場合、世界が異なるのだから尚更だ。疑心暗鬼にもなる」
「……怒って、ないんですか? 私、リューを疑ってしまったのに」
「怒ってはいないが、不満には思っているぞ」

 見ればリューはまたあの不貞腐れたような顔をしていて。

「疑ったことをじゃない。コハルがこんなにも不安になっていることを、俺に話してくれなかったことをだ」
「リュー……」
「これからはなんでも話して欲しい。俺の知らないところでコハルが苦しんでいるのは、嫌だ」

 抱きしめる腕に力がこもって、また涙が滲んだ。

 ――あぁ、この人はなんて優しくて、大きくて、あたたかいのだろう。
 こんなに綺麗な人を私は疑ってしまったのだ。

「はい……本当に、すみませんでした」

 もう一度謝罪して、私は彼の胸の中で後悔と安堵の涙を流したのだった。