「――ル、コハル?」
「え?」

 ハっと顔を上げると、リューが心配そうに首を傾げていた。

「大丈夫か? 何度か呼んだんだが」
「す、すみません! ちょっとぼーっとしちゃって」

 いけない。
 食事中だと言うのに手が止まってしまっていた。
 私は大きなお皿に乗った料理を口に運んだ。

「セレスト、あまりコハルに無理をさせるな」

 リューが後ろに控えている彼に溜息交じりに言うのを聞いて慌てて首を振る。

「いえ、全然無理なんて……! セレストさんの授業はわかりやすくてとても勉強になりました」
「ならいいが」
「お蔭でティーアからの手紙にコハルって名前が書かれていたのも読めるようになったんです」

 笑顔で言うと、セレストさんが軽く頭を下げた。

「それは何よりです」
「それで、手紙の内容はわかったのか?」
「え……」

 リューに訊かれてどきりとする。

『 コハルを向こうの世界に帰してあげられなくなってしまったの 』

 先ほど聞いたティーアの声が耳に蘇った。