『 誰が、何のためにこんな酷いことをしたのかわからないけれど、なんだか凄く嫌な予感がして……コハル、どうか十分に気を付けて。また何かわかったら、こうして手紙を送ります。花の国のティーアより 』

 そこで手紙は終わりのようだった。

「コハル様……?」
「……」

 メリーの気遣うような声が聞こえたけれど、応えてあげることが出来なかった。

 ――向こうの世界に、帰れなくなった……?

 竜帝妃として、この竜の国で暮らすことを決めたのに。
 向こうの世界に会いたい人がいるわけでもないのに。
 聞いた瞬間、足元がガラガラと崩れていくような感覚に襲われた。

 帰りたかったらいつでもまた帰れるのだと、無意識に思い込んでいたのだろうか……?

「コハル様……お顔が真っ青なのです。大丈夫ですか?」
「え? あ、ごめん。大丈夫。ちょっとびっくりしちゃって」

 ソファの背もたれに寄り掛かって、一度大きく深呼吸をする。

「メリーもびっくりしました。――あ! ひょっとして、あの竜人族の仕業でしょうか!」
「え?」