「――あ、そうだ。手紙」

 ティーアから届いた手紙のことを思い出す。
 セレストさんと作ったアルファベット表を見ながらなんとか少しでも読めないだろうか。

 ……友人からの手紙を読んで、この不安な気持ちを紛らわしたかった。

 ソファに腰を下ろしてその手紙を改めて見てみる。すると。

「あっ、“コハル”って書いてある!」

 封筒の表側につい先ほど何度も書いた自分の名前を見つけて嬉しくなった。
 早速、授業の成果が出たのだ。

「コハル様、もう文字が読めるようになったのですか?」

 そう言いながらメリーがこちらに飛んできて私の隣に舞い降りた。

「とりあえず名前だけね」

 でも問題は中身だ。

(単語はまだ何もわからないし、まだ無理かな……)

 そう思いながら封を切って中の手紙を取り出すと、ふわりと花の香りがして友人の優しい笑顔が目に浮かんだ。
 そして折り畳まれた手紙を開いた、その途端のことだ。

『 コハル 』

 そんな綺麗な女性の声が耳に響いて驚く。

「え、ティーア!?」

 間違いない。今の声は彼女のものだ。
 思わず周囲を見回すが、その姿はない。