そして、早速その日の昼過ぎからセレストさんの授業は始まった。
 場所は図書室。先日お城を案内されたときにちらっとだけ見せてもらったそこは立派な本棚が並び古い本特有の何とも言えない良い香りがした。
 時間は90分ほどと言われたけれど、忙しい合間を縫ってこうして私のために時間を作ってくれたのだから本当に感謝だ。

「よろしくお願いします!」

 机の前に立ったセレストさんに頭を下げる。
 と、彼の視線が私の隣の席に移った。

「メリー様もご一緒ですか」
「!」

 そこに座っていたメリーが慌てたようにその身を机の下に隠した。
 一人はやっぱりちょっと不安で連れて来てしまったのだけど。

「ダメでしたか……?」
「いえ、メリー様もこれからこの国で過ごされるのでしたら是非。――で、なぜ陛下までこちらに?」
「様子見だ」

 私を挟んでメリーとは逆隣に座ったリューが腕組みをしながら大真面目に答えて私は苦笑する。
 彼の場合、私が大丈夫ですよと遠慮してもやはり心配だからとついて来てくれたのだ。

「陛下には陛下のすべき事があるはずですが」
「少しだけだ。すぐに戻る」