「わかるんだな」

 感心したように呟いたリューをキっと見下ろす。

「リュー! もう、ほんとに離してください」
「話の途中だったろう。お願いとはなんだ?」
「え? あ、あぁ。あとでまた改めてお話します」

 今はとにかくメリーの元へ早く行ってあげたい。
 するとリューは短く息を吐いてやっと腕を緩めてくれた。
 ベッドから下りて寝室を出ようとしたところで、彼はもう一度念を押すように言った。

「コハル、絶対に無理はするなよ」
「は、はい。わかりました」

 扉を閉めて私はふうと息を吐く。

(そこまでヤワじゃないって言ってるのになぁ)

 大事にされるのは嫌ではないけれど、やっぱりちょっと過剰な気がした。

 と、しくしくという泣き声が聞こえてきて私はその姿を探す。
 メリーはいつものソファの端っこで小さく丸まって震えていて、私はそのすぐ隣に腰を下ろした。

「メリー」
「うっ、うっ、コハルさま、申し訳ありません……メリーは、コハルさまをお守りできなかったのです……」

 そんなメリーの謝罪を聞いて、私は苦笑する。

「あのね、メリー」
「メリーが役立たずなばっかりに、コハルさまが竜人族の餌食に~~っ」
「メリー、聞いて!」

 メリーの身体を抱き上げて膝の上に乗せる。
 するとメリーはべしょべしょの泣き顔で私を見上げた。

「あのね、メリー。私、竜帝妃になるって決めたの」
「え?」

 メリーがぽかんとした顔をした。

「これまでは正直迷ってたんだけどね、昨日やっとその覚悟を決めたの」
「コハルさま……?」