丁度そのときだった。

「コハルさま~! おはようございます~~!」
「メリー!」

 メリーがいつものように勢いよく寝室に飛び込んできて私は慌ててリューの上から退こうとする。
 が、背中に回った腕は緩むどころか更に力を増して驚く。

「ちょっと、リュー!?」
「こっの性懲りもなく~、コハルさまを今すぐに離しやがれーー!」
「貴様に命令されるいわれはない」
「昨日はこのメリーに恐れをなして逃げてったくせに~~」
「はっ、なんのことだかさっぱりだな。貴様のどこに恐れる要素があるというんだ?」
「ぐぬぬ~~」

 なんだか兄弟喧嘩のようにも見えてきてしまって小さく息を吐いていると。

「コハルさまはなぁ! 我らが妖精王さまとも気軽に話せる間柄なんだぞ! お前みたいな野蛮な竜人族なんかより妖精王さまのほうがずっとずっと」
「メリー!」

 流石にエルを出すのはマズイと慌ててその名を呼んだときだ。
 メリーが私を見下ろして、何かに気付いたように首を傾げた。

「コハルさま? なんだかいつもと……?」
「え?」
「……はっ!」

 急に大きな衝撃を受けたような顔をしたメリーはそのままふらふらと後退していく。

「まさか、そんな、メリーは、メリーは信じないのです……」
「メリー?」
「コハルさまの純潔が、こんな竜人族に奪われてしまうなんて~~っ!!」
「メリー!?」

 とんでもないことを喚きながらメリーは寝室を出て行ってしまった。