それから、リューは私を抱えて塔の出窓から夜空へと飛び立った。
 まだ火照った身体に夜気が心地よくて、辿り着いたのは私の部屋のバルコニーだった。
 リューは私を抱えたまま暗い部屋の中に入ると、ぐっすりと寝ているメリーの傍らを通って寝室へと移動した。
 大きなベッドに私を下ろして、彼は言う。

「少し待っていろ。水を持ってくる」
「ありがとうございます」

 お礼を言うと彼は私の額にキスをして、寝室を出て行った。

 ひとりになって、私はふぅと息を吐く。
 ――今、何時くらいだろう。
 随分と長いことあの塔の部屋にいた気がする。

(きっと、セレストさん心配しているだろうなぁ)

 ローサや他の人たちもだ。夕食の時間はとっくに過ぎているはずで。
 多分リューがセレストさんや皆にうまく説明してくれると思うけれど……。

 そう考えながら寝返りを打とうとして、

「痛っ、」

下腹に少しの痛みと違和感を覚えた。

 途端、つい先ほどまでの自分の痴態をまざまざと思い出してボンっと顔が爆発したみたいに熱くなった。

(私、本当にリューと……っ)

 しかも、自分から誘ってしまった。

 やっぱり、はしたなかっただろうか。
 何か変ではなかっただろうか。
 正解がわからなくて、むしろ全部おかしかった気がして大声を上げながら頭を抱えたくなった。

 ――でも、今とても心が満たされていて。

(リューも、同じ気持ちだったらいいな……)

 そう思って、私は目を閉じた。