「こんなのは初めてで、どうすればいいのかわからなくなった」

(リューも、初めてだった……?)

 彼が腕を緩めて、私を見つめる。

「二度も泣かせて、すまない」

 そうして彼は私の涙を指で優しく拭ってくれた。

「コハルは、こんな俺でもいいのか?」

 こちらを見下ろす金色の瞳は、もう怖くはなかった。
 優しく揺れるその瞳を見上げて、私は今出来る精一杯の笑みを浮かべる。

「それはこっちのセリフです。ずっと、そう言っているじゃないですか」
「俺はコハルしか愛せない。ずっと、そう言っているだろう」
「私も、リューだけです」

 両手を伸ばして、彼の頬に触れる。

「私はリューが喚んでくれたからこの世界に戻ってきたんです。それを、忘れないでください」

 宝石のような金の瞳が一際大きく揺らめいて、もう一度強く抱きしめられた。

「あぁ、忘れない。ありがとう、コハル……っ」

 その温もりに安心を覚えて、私は彼の背中に手を回した。

 ――まだ、これが「恋」や「愛」というものなのかどうかはわからない。
 でもそれを知るのは、(リュー)がいい。

 私の“初めて”は全部、リューがいいと思った。