「背が伸びて腹立つくらいイケメンになっても、あの頃と変わらないリューだから、だから私は……」

 目の前に立った彼が、涙で見えない。

「だから、今更他に行けなんて、言わないで……っ」

 言葉の途中で、強く抱きすくめられた。

「すまない」

 つま先が浮くくらいきつく抱きしめられて、彼がもう一度繰り返す。

「すまない、コハル」

 その苦しそうな、でも優しい声音を聴いてまた涙があふれた。

「……怖かった」
「え……?」
「コハルに嫌われてしまったのだと思って、たまらなく怖かったんだ」

 絞り出したような震えた声で、彼は続ける。

「妖精王とのことも、コハルを信じたいのに、俺よりも奴の方がコハルを知っているのだと見せつけられたようで、どうしようもなく苛立って、我を忘れた。……コハルに嫌われて当然だと、心底自分が嫌になった」

 耳のすぐ後ろでぽつりぽつりと吐露される彼の気持ちが、なぜだか心地よくて。