「そういえば、リュー皇子のお母さんは今どこに……?」

 7年前、何がきっかけか忘れてしまったけれどそう訊ねたことがあった。
 すると彼はこちらを見ずに、さらっと答えてくれた。

「母上は2年前に病で死んでしまった」
「! ご、ごめんなさい!」

 私が慌てて謝ると、彼は呆れたような顔でこちらを振り返った。

「なぜお前が謝る」
「だって……」
「確か、お前は父も母もいないのだったな」
「そう、ですが……私の場合、物心ついたときにはもういなかったのでそれが当たり前というか」
「そうか。……母上は元々身体が弱くてな。だが父上は、そんな母上のことを深く愛していた」

 そう話すリュー皇子は、とても優しい目をしていた。

「だから、父上は母上がいなくなって本当はとても辛かったのだと思う。俺の前でこそそんな素振りは見せなかったが。……そこを、魔王につけ込まれたのではないかと俺は思っている」

 そうして彼は魔王に対して怒りと憎しみを露わにしたのだ。