――そうだ。
 メリーがエルの正体を知っているということは、メリーが私がいなくなったことを誰かに話したということで。
 それは当然、リューの耳にも入るはずで。

(――ど、どうしよう。なんて説明しよう。エルと都を散策してましたなんて言ったらやっぱマズイよね……? あ、それよりまずは大嫌いって言ってしまったことを謝らないと……)

 でも、こちらを無言で見下ろすその瞳が、先ほど間近で見たあの竜の眼と重なって思わず後退りをしてしまった。
 それに気付いたのだろう、メリーが私の腕から抜け出て彼に向かって強く言い放った。

「コハルさまに近づいてみろ! この妖精メリーが必殺キックをお見舞いしてやるからなー!」
「……」
「メリー!」

 慌てて止めようとして、でもリューはそのまま何も言わずバサリと大きく翼を動かし飛んでいってしまった。

「えっ!?」

 驚いてバルコニーから身を乗り出すと、城の一番高い塔の方へと飛んでいく彼の姿が見えて。