私はそれを誤魔化すためにメリーのふわふわな毛をわしゃわしゃと撫でまくる。

「あはあはっ! コハルさま~くすぐったいのです~~ぅぎゃあ!?」
「ど、どうしたのメリー」

 急に凄い悲鳴を上げたメリーに驚いてその視線を辿れば、バルコニーでひらひらと手を振っている笑顔の彼が見えた。

「……っ」
「コハルさま……?」
「メリーは、ここで待ってて」

 私はすくと立ち上がってそちらへと向かう。
 勢いよく窓を開けて、キっと彼を睨み上げた。

「エル!」
「おっと、お怒りだね?」
「怒ってるよ! や、怒ってますよ! リューをわざと怒らせるようなことして!」

 言うと彼は全く悪びれなく笑った。

「あっはは。いやぁ、なんというかあまりに予想通りの反応だったからつい楽しくなっちゃって」
「予想通りって、やっぱり全部わざとなんですね!?」
「ちょっと君らを試してみただけだよ」
「試した? 何のために」

 訊くと、彼はこれまでとは違うなんだか意味深な笑みを浮かべた。

「君のことが心配だったんだ」
「え?」
「なんだか、悩んでいるようだったから」
「っ、」

 カっとまた顔が熱くなった。
 さっきバルコニーであれこれ考えていたところをきっと見られていたのだ。
 すると彼はにっこりと笑った。

「ねぇ、コハル。ちょっと散歩でもしようか?」
「え?」

 優しく手を取られて、途端ふわりと自分の身体が宙に浮くのがわかった。

「へぁ!?」
「気分転換にさ、あの頃のように一緒に歩こう!」

 気づいたら私はエルに手を引かれバルコニーから城の上空へと高く舞い上がっていた。