「……」
「……」

 気まずい沈黙。

(リュー、怒ってるよね……?)

 こちらに向けられたままの背中から、それが伝わってくる。
 ついさっき彼が嫉妬すると知ったばかりなのに。

(エルも何もあんなことまで言わなくたって……)

 結局この雰囲気に耐え切れなくなった私はその背中に声を掛けた。

「リュー? あの、彼は本当に……その、妖精王なんですか?」
「……妖精王エルフェイツィー。奴の名だ」

 聞いたことのない低い声。
 と、彼がこちらを振り向き、私に手を差し出した。

「それを」
「え?」
「さっき奴から受け取った」
「お守り?」

 私は手に持ったままの小箱に目を落とす。

「処分する」
「は!?」

 まさかの言葉に私は驚く。

「なんでそんなこと」
「不吉だからだ」
「不吉って……エルはお守りって言ってましたよ!」

 そう返すと、彼はぴくりと表情を歪めた。

「コハル」

 私は首を振ってその小箱を背中に隠す。

「ダメです。っていうか、なんでそんなにエルのこと「奴」とか「不吉」とか酷い言い方するんですか。同じ王様同士なんでしょう?」
「……この間も言ったと思ったが、奴ら妖精とは基本的に相性が悪い」
「相性って」

 確かについ先日そう聞いたけれど。
 彼は憎々し気な表情で続けた。

「あいつは特に昔から気に食わん。勝手で気まぐれで散々人を振り回して、それでいつもああして人を小馬鹿にしたように笑っている」
「そんな……」