「『妖精の国』特製のお守りだよ」
「お守り?」
「そう。コハルはそそっかしいからねぇ。ほら、さっきも椅子ごとひっくり返りそうになっていただろう?」
「あ、あれは……!」

 思い出して顔が熱くなる。

「あの頃もコハルはよく転んだり自分から危険に飛び込んでいったり本当に目が離せなかったからね。きっとこれが君を守ってくれるよ」
「ありがとう、ございます」

 昔の話はあまりしないで欲しいと思いながらもしっかりと頭を下げてお礼を言うと、エルは可笑しそうに吹き出した。

「なんだいさっきから。いつもの調子で話してくれていいのに。……僕の正体を知って、驚いたかい?」

 面白がるように言われて少しむっとする。

「そりゃ、驚きましたよ。……言ってくれたら良かったのに」

 最後ぼそっと小声で続ける。
 こんな形で知ることになるなんて、一番恥ずかしいではないか。
 すると彼は悪戯が成功した子供のように満足げに微笑んだ。

「そうやってコハルが驚く顔が見たかったんだ。でも、ほんと今まで通りで構わないよ。君は、僕の特別だからね」
「特別って、」

 そのときだ。
 突然目の前に長い腕が伸びてきた。

「妖精王、あまり俺の妻に近づかないでもらいたい」

(リュー!?)

 私の傍らに立ったリューが不機嫌を隠さずにエルを睨んでいて焦る。
 一応エルは本当に王様みたいで、そんな彼にその態度はマズイのではないだろうか。