(それにしてもエル、何にも変わってなかったなぁ)

 ローサが淹れてくれた紅茶を飲みながら彼の笑顔を思い浮かべる。
 あの頃も年齢不詳な美しさを持った人だと思ったけれど。
 でもこういう再会は純粋に嬉しい。
 7年前に出逢った人たちにこれからもこうして会えるのだと思ったら口元が緩んだ。

(でも、何しに来たんだろう……?)

 私がこの世界に戻ってきたのを知ってわざわざ会いに来てくれたのだろうか。
 だとしたらまた姿を見せてくれるだろうか。

「それでは、また昼食のご用意が出来ましたらお声がけいたします」
「あ、ローサ!」
「はい?」

 部屋を出て行こうとした彼女を呼び止める。

「私に何か出来ることってないかな」
「え?」
「その、こういうとき時間持て余しちゃって。掃除とか料理とか、私にも何か手伝えることないかなって」

 私がそう言うと、ローサは困ったように笑った。

「お気持ちは大変有難いのですが、コハル様にそういったことをお手伝いしていただくわけには……」
「そ、そうだよね、バレたら大変だもんね」
「コハル様は午後から大事なご公務がございますから、それまでゆっくりなさってください」
「うん、ありがとうローサ」

 ローサは微笑んで部屋を出て行った。
 ふぅと溜息を吐く。
 家事を何もしなくていいなんて以前に比べたら夢のような生活なのに、どうにも落ち着かない。

(でもそうだ。私は私のお仕事を頑張ろう)

 庭園のこととかリューに相談したいこともある。
 それまでは存分にゆっくりすることにした。