再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。


 しどろもどろにそう答えると、彼は渋々というように頷いた。

「わかった。ではもう少し待つとしよう。準備にはどのくらい必要だ?」
「えーと、一年とか?」
「あ?」
「い、いえ! えっと、半年……いや、一ヶげ……一週間!?」
「わかった。では一週間後、また再びここに迎えに来よう」

 とりあえず明日の会議には出席できそうだとホっと胸を撫でおろしていると。

「コハル」

 急に距離を詰めてきた彼は、私の頬に優しく手を触れた。
 間近に迫ったその金の瞳は宝石のように綺麗で――。

(――え?)

 気付けば、私の唇に彼のそれが重なっていた。

「あぁーーっ!」

 メリーの甲高い怒声が響く中、ちゅっと軽い音を立てて彼は私から離れた。
 そうして極上の笑みを称え、言った。

「今日は久しぶりに逢えて嬉しかったぞ、コハル。――では、またな」

 くるりと背を向け、そして彼は来た時と同じように颯爽とこの部屋から出て行ってしまった。
 残された私はしばらく呆然としてから、ゆっくりとソファに腰を下ろす。

「……コハル、大丈夫?」
「ほんっとに、これだから竜人族はっ!」

 ティーアの心配そうな声と、メリーの憤慨したような声が聞こえる。

 ――ど、どうしよう……。

 全身が熱くて、頭が混乱して、そういえばこれが私のファーストキスだとか気付いてしまって、私はしばらくそのまま動くことが出来なかった。