「くそっ! こんなことしてただで済むと思うなよ?!」
「こちらの台詞です。クリスティーナ様を私欲のために利用しようとしたな」

 冷たく突き刺さるような声でリュディーは言うと、同じく彼を咎めるためにレオンハルトが歩みを進めた。

「あなたの悪事はすでに知れ渡っています。先程、我が国王にも早馬で知らせました」
「ふん、私が何をしたというんだ」

 レオンハルトは持っていた書類をリストに見せる。
 その書類はリュディーとミハエルが調べ上げた、リストの悪事の全てが記されたものだった。

「掘れば出てくる、法を犯しているというのに、意外と爪が甘いのですね」
「なに?」

 苛立ちやすい性格の彼は立ち上がってレオンハルトへ掴みかかろうとするが、その手をリュディーが払い、そのまま関節を外す。

「いってええっ!!」
「おとなしくしなければ、もっと痛い目に合わせる」

 耳元で囁かれた声色の低さと鋭さにぞわりとさせて、リストは苦々しい表情を浮かべた。

「リュディーはこの国一番の武術使いです。騒がない方が身のためかと」
「……ぐっ……」