「そのために、幼い少女に”君の親は君がいらないから捨てた”と、そう言わせたのですか?」
「……!」
「あなたはどこまでも下衆だ。人の気持ちをなんとも思わない。自分の手は汚さない。全て人にさせる。なにもかも」

 レオンハルトは机の上に置いていた書類を手に取ると、そのまま彼に見せる。

「毎日毎日ルセック伯爵夫妻に気づかれぬよう、部下に客のフリをさせて少女に近づき暴言を吐いた」

 コルネリアに浴びせられた暴言は凄まじい数のものであった。

『お前は本当の親に捨てられた』
『お前の力は本当は人を不幸にしている』
『お前の親はお前を愛していない』
『お前が治した患者は昨日死んだ』

 嘘が大半であったが、幼い少女をそれを信じ込んでしまい、ふさぎ込んでしまった。
 自分に価値がない、自分が今まで褒められていたことは本当はよくないことだったんだ、と思い込んだ少女の心は段々壊れていく。
 少女は自信を失い、そして愛情を感じられなくなったことで、聖女の力はどんどん彼女の無意識のうちに封じ込められて行ってしまった。

 そして、三歳になったある日、彼にこう言われたのだ。