コルネリアはどうしていいかわからなかった──
 目の前にうずくまって罪の意識に苛まれるレオンハルトになんて声をかけてよいのか、そしてどうやって触れていいのかわからなかった。
 「大丈夫ですよ」と声をかけるのは簡単。
 でも、そんな事を決して彼は望んでいないとわかったからこそ、そしてなにより自分自身の醜い嫉妬の感情が彼自身に触れたことで伝わるのではないかと思い怖かった。

(思い合ってたんだ、二人とも……そんな仲に……)

 『入れるわけない』
 そう心の中で呟いた彼女は、何も言えず、それでも胸に抑えきれない想いがあふれ出してわずかな吐息と声が漏れる。
 彼は自分だけをずっと愛していたと慢心していた、愛を受け続けることに慣れてしまった自分への罰だと思った。

(好きで、好きで、でも……そんな二人の仲を聞いて私は……)

 クラリッサと自分を比べて嫌になる。
 彼女は公爵としての責務を全うするレオンハルトを立派に支えようとしており、実際にそうしていた。
 しかし、今の自分はどうだろうか。
 彼に助けられ、彼に守られ、彼に救われて生きている。