レオンハルトの告白を聞き、コルネリアは思わず呼吸が止まったような気がした。

(婚約者……? レオンハルト様の、クラリッサさんが……)

 コルネリアの動揺を感じ取った彼は、そのまま目を合わせることなくただバツが悪そうに下を向く。
 当然自分だけに向いていると思っていた彼の心が、一瞬でも別の女性にあったと聞いてコルネリアの心は押しつぶされる。
 ただ、彼女自身も二人の中に流れる沈黙の中で、思考が動いて来る。
 そうだ、彼は若くして公爵という地位におり、その見目麗しい姿から様々な方面から憧れの念を抱かれている。

(婚約者がいてもおかしくない、わよね)

 コルネリアは落胆すると共に自分の中から湧き出る醜い嫉妬に嫌気がさした。
 クラリッサはどんな人だったのか。
 婚約者同士で仲睦まじく過ごす光景が頭をよぎり、唇が震えてくる。

「クラリッサはお母様、私の母の親戚にあたる子だった。私と同い年で気概も良く社交界では評判だった。彼女と婚約したのはちょうど五年前だよ。国王の勧めで紹介された」