そのドアを支えるように父親の手が伸びているが、血で濡れておりその身体も衝撃を受けている。

「おかあさま……? おとうさま……?」

 レオンハルトが何度も両親を呼ぶも、ピクリとも動かない二人。

「旦那様っ! 奥様っ! 坊ちゃまっ!!」

 執事長であるジルドが馬車の外から扉をこじ開けようとしながら、声をかける。
 なんとか扉を開けようとするも、馬車は横転して木にぶつかっており、ドアは大きく歪んでいるためすぐに開けられない。

「じいーー!!!」

 執事長の名を必死で呼んだレオンハルトだったが、眩暈と共にそのまま意識を手放した──




「おとうさまっ! おかあさまっ!!」

 飛び起きて大声で叫んだレオンハルトは、大粒の汗を垂らして息を乱す。
 ベッドに滴り落ちた汗を見つめ、まわりを見渡すと、水に布を浸すジルドと目があった。

「坊ちゃま、もしやあの日の夢を……」
「夢……夢だったのか」
「はい、坊ちゃまは呪いに倒れられて、それでコルネリア様に……」
「──っ!!」

 「コルネリア」という言葉がとても鮮明に脳に届き、そして彼を突き動かした。