こうなれば、もう王宮内にいるしかないと、レオンハルトは彼女がよくいる書庫室の方へと向かった。

(もう、どこに行ったんだよ、クリスティーナ)

 レオンハルトは数十分見当たらないことに焦りを感じて、王宮内の廊下を駆ける。
 そんな時だった、彼が国王に声をかけられたのは。

「廊下を走るなっ!!」
「ひいいー!!」

 突然の大声かついきなり首根っこを掴まれて、そして抱えあげられたまま顔を近づけられる。
 レオンハルトの目の前には、国王の鋭い目つき、そして皺の寄った額、足蓄えられた髭があり、その顔は恐ろしい表情に見えた。

「あ、あ、あ、……申し訳ございません、国王」

 なんとか勇気を振り絞ってその言葉だけは言ったものの、もはや身体が固まってしまって動けない。
 もうその目には涙があふれて、そして零れている。

 国王がようやく彼を解放した瞬間に、彼は脱兎のごとく国王から逃げていた……。



「それで、レオンハルト様は……?」
「私は庭園にずっといたんだけど、ものすごい勢いで王宮内から出てきてね? もうわんわん泣いてて……」
「なるほど……」